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2020年6月27日 (土)

ボルトン前アメリカ大統領補佐官の暴露本のことなど

ジョン・ボルトン前アメリカ大統領補佐官の暴露本を巡って色々と喧しい。それはそうだろう、アメリカ大統領のすぐそばにいて、国際的に重要な外交の場にいた人の“暴露”が関心を惹かないはずがない。前宣伝は派手でも、いざ蓋を開けてみればさほど目新しいことでもない、というのがよくある話だが、さて、どうなのだろう。

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「不動産屋のトランプ大統領には思想・哲学がなく、知識欲にも乏しい」と言ったらアメリカ最大の国家機密の暴露になるかも知れない。ま、これは私が勝手に書いたこと。ただ、自己正当化や他者への責任転嫁は若い時からの常套手段だったようだから、当たらずといえども遠からず、だと思っている。今から30年以上前、私がアメリカに一時居住していた時も、トランプ氏は何かとメディアを賑やかしていた。

今までのいきさつを軽視して、制裁や脱退、撤退などの脅しを振り回す外交はいつか何らかの形で破綻すると思うが、強大国アメリカの国民が自ら選んだ大統領を世界はとりあえずそれなりに尊重せねばならない。これはトランプ氏にとって快感だろう。

ボルトン氏がどういう人かについて私はあまり知識がない。衛星放送の北朝鮮特集の中でのインタビューからすれば、彼は北朝鮮について間違いなく非常に詳しい。これには驚いた。かの国を詳しく知れば知るほど、対応に苦慮するはずだ。ボルトン氏もその上で対応を模索したのだろうが、トランプ氏のパフォーマンスのやり過ぎには苦り切っていたのかも知れない。親北の文在寅大統領の言動には、「頭がどうかしているのではないか」と思っていたはずだ。

ボルトン氏の書を原文で読む能力も根気もないので、訳本が出たら読もうと思っているが、こういう世相で、一読に値する日本の新刊書がある。それは重村智計(しげむらとしみつ)氏の『日韓朝「虚言と幻想の帝国」の解放 戦後75年の朝鮮半島』(秀和システム)だ。毎日新聞記者、早稲田大学教授などを務めた重村氏には、朝鮮半島に関する言で私は最も信をおいており、手に取って確かめることなく、新聞広告を見てすぐにアマゾンから書を取り寄せた。

書を開いて、正直なところ当初はちょっと失望した。ソフトカバーでそれなりの厚さはあるが、字が大きくていかにも密度が低い。ポツポツと文節を短く区切り、読みやすいと言えば読みやすいが、あまり味のある文章ではない。しかし読み進めてみて、変わらぬ率直なもの言いで、私の知らなかったことも多く書かれていて、さすがだと感じた。朝鮮半島の戦後で、安在鴻の名前が出てなかったが、重村氏はどう考えているのだろう。

韓国は反日民族主義を拠りどころにするほかなく、北朝鮮は金日成民族主義だと重村氏は記しているが、書についてはここで紹介するよりも読んで頂いた方が早い。私にとって驚いたのは、重村氏が、在日韓国人の李隆(イ・ユン)氏に触れていたことだ。この李隆氏は私の知己で、30年近く前、当時朝鮮半島に関する書を読み漁っていたことから私は知識に少々自信があり、「在日の印籠でビビると思ったら大間違いだ」と、当時のパソコン通信での大喧嘩が出会いの始まりであった。

居住地が近いことで李隆氏と直接に会い、一時は友人とも言える付き合いをしていた。英語が流暢な彼に助けてもらったこともあるし、彼の要請に応えて私がそれなりの便宜を図ったこともある。私が3冊目の本を書いた時、「無名の駅伝選手がいきなりフルマラソンのトップランナーになったようだ」と褒めてくれた時は、普段が辛口なだけに、無性に嬉しかった。

当時聞いたところによれば、彼は朴正煕を題材にとった小説を書こうとしていて、資料蒐集のためにあちこち飛び回っていたようだ。私も沖縄に移籍したため、次第に疎遠になってしまった。

「重村さんは非常に優れたジャーナリストだ」と言った私に、李隆氏は、朝鮮半島の問題であの人の右に出る人はいないだろうと同意しつつ、「見かけは貧相だが、重村さんは大金持ちで子だくさんなんだ」と、事実かどうか、関係ないことを語っていた。相互に知己だったというのは書で初めて知った。本を読みながら、李隆氏は面白いキャラだった、と懐かしく思い起す。

差別告発のパフォーマー『朝日新聞』は、在日韓国・朝鮮人を記者として長らく採用していなかった。そんな中、右で鳴る産経新聞社は李隆氏を在日第一号の記者として採用した。その後、李隆氏は社を辞し、渡米している。

重村氏はスタンフォード大学で李隆氏と知り合ったようで、李隆氏の訳本、『黒い憂鬱』を書中で紹介している。今は黒人差別が大問題となっているが、逆に「affirmative action」、被差別者として優遇された面もあり、黒人がそれに甘えてしまう構造の問題を提起した良書である。訳文もこなれている。

ボルトン氏の暴露本のことを冒頭において、重村智計氏、李隆氏と話が横すべりしてしまった。論文ではそうはいかないが、雑文綴りでは、そういう尻取り的、横すべり式の、読み方、書き方を好んでしているので、これはこれでお許し頂きたい。

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