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2020年5月 8日 (金)

江戸時代に麻疹で24万人が死亡

恋わずらいか何か、若い時分に誰でもが経験するささいな苦い体験を「はしか(麻疹)のようなものだ」、と表現することがある。だから普通には麻疹はたいしたことがない、と思われている。しかし、実際には麻疹は特徴的な発疹に高熱をきたし、重篤な合併症で致命的にもなる結構な重症疾患だ。

今まさに世界を悩ませている新型コロナ同様に、麻疹もウイルスによるものである。下掲の写真は麻疹ウイルス。新型コロナに似ているが種類が異なる。幸いにしてこちらにはワクチンがあり、ほとんどの人が予防接種を受けていて、散発的な流行は見られるものの、昨今は社会問題化することはあまりない。ただ、一旦発症すれば決め手となる治療薬がないという点では新型コロナと同様だ。

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『江戸暮らしの内側 -快適で平和に生きる知恵-』(森田健司 中公新書ラクレ)によれば、江戸時代末期の1862年に麻疹が大流行し、江戸だけでも約24万人の死者が出たという。当時の日本の人口は約3000万人と言われおり、当然にして江戸以外の地域でも死者が多くあっただろうから、人口の約1%が死亡するというとんでもない致死率である。原因もわからずもちろん治療法などあるはずもなく、ただただ神仏に祈るほかなかったに違いない。

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今の新型コロナは、日本において1億3千万人の総人口を母集団にとれば、感染者は約0.01%(実際はもっと多いと思う)、死亡者は0.0005%ぐらいなので、人口の1%が死亡するという流行がいかに凄まじいものであったかがわかる。季節的には春から初夏なので、今の新型コロナと少なくとも大流行のはじまりは重なっている。

『江戸暮らしの内側』は、なぜ江戸で蕎麦(そば)が大人気になったのかということも解説されていてまことに面白い名著だ。なんでも、そもそもは饂飩(うどん)の方が人気が上だったのが、醤油の江戸への流通とダシの工夫がカギとなり蕎麦が饂飩を大逆転したらしい。そういうことは全く知らなかった。

さて、江戸時代は麻疹に限らず、大地震や大火、津波、飢饉、富士山噴火など、庶民が苦しむようなことが多くあった。にもかかわらず、同書によれば、「庶民は、惨劇のただ中で、何とか前を向こうと努力していたのである」と記している。さらに著者は、「この世の地獄のような状況で、それでも前を向かなければ、自分だけでなく、家族も生きていけない。そうなれば、一番良いのは笑うことだったのだろう。耳で聞いても、すぐに真似ができるような生き方ではない」と綴っている。森田健司氏は大阪学院大学経済学部教授で、江戸時代の庶民文化・思想を研究する中で、当時の庶民のたくましさに畏敬を感じたのであろう。意外なことに、道徳も浸透していたらしい。

翻って今の新型コロナ、アベのマスク、アホのマスク、などなど言いながら、ほとんどの人がマスクを着けている。意識の高さは閑散とした街を見ればよく分かる。「バラマキを批判しつつも待ちわびる」とは何年か前のサラリーマン川柳にあったが、なんだかんだ言いながら、みんな10万円を楽しみにしている。現代の人も結構逞しいのではないだろうか。

ただ、人の移動や会食などが激減しているわけだから、特にサービス業の苦境は必然的で、いかんともし難い。政府や行政には大いに支援してもらいたいと思うし、せめてもと、自粛が明けた日には、江戸時代の持たれあいの長屋の精神に倣って、ささやかな消費をしていくつもりだ。

実は、私も、元臨床医としてそれなりの情報収集はしている。一般には見れない医療系ネットからの情報も得ている。間違う可能性もあるので、あくまで末尾にコソッと書いておく。新型コロナは近いうちに必ず収束する。

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