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2020年3月 6日 (金)

多様性の不思議

この地球上の生物は本当に多様だ。ヒト(人)をとってみれば、骨や器官などは解剖学的に同じであっても、人種の違いがあるし、同じ人種であっても、背が高い、低い、痩せている、太っている、と容貌が異なる。機能的にも、速く走れる、歌が上手い、数学がやたら得意などなど、違いというか才能をあげていけばきりがない。何十億人といても全く同一はない。

ヘビが好きな人はあまりいないと思うが、この地球上で最もうまく環境に適応してたくましく生き抜いてきた種のひとつがヘビである。その種類は3000にものぼるという。「蛇足ながら」とつけ加えるのは、ヘビに足を描いて台無しにしたという故事にならって、余計なことかと迷いつつ、知識をひけらかす時の決まり文句だ。だが、ヘビはもともとトカゲから進化したようで、内部にかすかに足の痕跡が見られるという。ヘビの種類も数も多いのは我々一般人にはあまり有難い話ではないが、生物学的には興味深く貴重な存在らしい。そのせいかどうか、ヘビが好きでたまらないという奇特な人もいる。

鳥はというと、1万種ぐらいある。インコなど、ペットとして大人気だ。フクロウも、飼い方は難しくてもうまくいけばよく慣れて癒してくれるらしい。鳥は一般的には空を飛ぶわけだが、ペンギンやダチョウ、あるいはクイナのように、飛ぶことをやめた鳥達もいる。

動物の多様性は語ればきりがないが、単純なはずの単細胞である細菌も実は種類が非常に多い。一部の種は体内で人間と共生している。いわゆる常在菌は通常は悪いことはせず、むしろ、層というか叢を形成してたちの悪い菌の進入を防いでいる。抗生物質を濫用すると、この常在菌叢をやっつけてしまい、かえって防御能力を低下させてしまう。普段は存在しているだけで悪いことをしない細菌が突然のようにひどい感染を引き起こすということもある。なぜそうなるのか誰もわからない。

ウィルスはというと、生物とみなすかどうかも判然としていないが、その種類は多くある。殻に包まれ、増殖に必要なエッセンスだけを持っているものの、独自での増殖はできず、生物に入り込んで増殖する。今は新型コロナウィルスが世界を揺り動かしているが、ウィルスは太陽周囲の炎の形、つまりコロナ型が多く、形態的には、今流行っているものが特別というわけではない。ただ、これも多様性というか、性質が異なっていて、我々を悩ませているわけだ。下図は太陽のコロナと新型コロナウィルス。

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紛らわしいが、インフルエンザ菌は細菌であり、それによって起こった感染をインフルエンザとは言わない。一般に言うインフルエンザの原因はインフルエンザウィルスによる。

新型コロナに対して、本来は免疫力を弱めるため感染症には禁忌のはずのステロイドの吸入薬が効果的だったという話がある。それだと、増殖したウィルスが悪いことをするというだけでなく、生体の過剰反応が重篤化の原因になっているかも知れない。情報が非常に多いようで、実のある情報というのは意外に少ない。今はまさに“群盲象を撫ず”状態だろう。その中でも、このステロイドについての記事には目が止まった。十分あり得る話だからだ。

生体の免疫系は非常に複雑で、ひとつのシステムとして、危機に応じてあまた多くのサイトカインという物質を出している。これが暴走すると自己組織を破壊してひどいことになる。ステロイドはこれを抑制する。

まさに蛇足だが、ECMOという言葉も出ている。これを治療と誤解するむきも多いかも知れないが、これは人工呼吸器を使っても血液の酸素濃度が致命的に低くなった患者に対して、脱血し酸素化して送血する機械で血液の酸素化を一時的に助ける、いわば瀬戸際に追い込まれた患者の命をつなぐ装置である。色々な問題があってせいぜい数日程度しか使えない。治療というわけではなく、その間に患者が回復しなければどうやっても救命は難しい。もうひとつ蛇足を書けば、感染症の専門医が多くメディアに登場しているが、最後の最後に患者の生死と対峙するのは決して彼らではなく、救急や集中治療の専門医である。日本の死亡者が比較的少ないのは多分ここにある。

それにしても、と思う。どうしてこれほどの多様性があるのだろうか。元をただせば現代の科学からすれば全て電子を代表とする素粒子だ。なのにそこから原子ができ分子ができ組織や臓器ができ個体ができと、とんでもない多様性、途方もなく複雑なシステムができている。人知は砂粒のひとつにもならないだろう。考えていけば、不思議過ぎて思考停止に陥り、辿り着くのは“神”しかない。

神にすがっているとは言えないので、白衣やスクラブを着て経験と知見範囲でもっともらしいことを言いながら、心の中では祈るような思いでいたことを、昨今の報道を見ながらホロ苦く思い出す。患者さんのために、医療従事者のために、そして社会のために、なんとか早く収束して欲しいと心から願わずにはいられない。

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