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2018年9月13日 (木)

西郷隆盛 その17 薩長同盟の謎

書くのが好きなだけに、結構こまめにブログの更新をしてきたのだけど、今回は随分間が空いた。私事に追われたこともあるが、薩長同盟について書こうとして壁にぶつかり、あれこれ見ているうちにいつの間にか時が過ぎ去ってしまった。

 

坂本龍馬が薩摩と長州の間を取り持つことで幕府を倒すきっかけを作り、それによって明治になっても薩長閥が支配力を握った、ということが言われている。大河ドラマでは薩摩が長州に頭を下げて薩長同盟を懇請したことになっている。書も、薩摩があのように頭を下げたかどうかはともかく、多くは概そのように記されている。

 

薩長同盟、これは少なくとも当初は同盟というほどの強固なものではなく、志士間の誓約的なものだとも言われている。その内容の詳細は、慶応2121日か22日(1866年3月8日)に坂本龍馬が同席して、桂小五郎(のちの木戸孝允)、小松帯刀、西郷隆盛、大久保利通らが京都の小松帯刀邸で話し合いを行い、その内容を桂小五郎が要約して手紙で坂本龍馬に確認を求め、龍馬が「間違いない」と朱筆で裏書きして返信した資料に拠っている。現物は宮内庁に保管されているらしい。

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長くなるので抜粋は避けるが、その内容はというと、薩摩が一方的に長州を援助するというもので、どう読んでも薩摩のメリットがどこにあるのかが私にはサッパリ分からない。朝敵とされ、内部不和をきたし、征伐も受けそうになって非常に苦しかったのは長州であり、その長州にあえて薩摩が歩み寄るというのは考えて見ればおかしな話だ。およそ協力の約束というのは互恵的であるのが普通だ。これは今も昔も同様だろう。

 

薩摩はその後長州から兵糧米の調達などの便宜は受けているが、少なくともそうするということは記されていない。記されていたとしても格段に重要なこととも思えない。薩摩は慶応2年の米高騰の折には大阪で民衆への施し米をしているので、少なくとも極度に困っていたわけではないだろう。長州による薩摩の長崎丸への砲撃事件、禁門の変と、薩摩と長州は何かとぎくしゃくしていたわけだが、藩主同士は既に前年に手紙で和解を得ている。

 

さらに、「皇国之御為」という表現もひっかかる。幕末においても使われていたのかも知れないが、いかにも明治っぽい表現ではある。慶応2121日頃は、薩摩も長州も、江戸幕府の武力打倒を現実的なものとして考えていたようには思われない。そこまで言い切るものだろうか。

 

龍馬はというと、123日(186639日)に宿泊していた寺田屋で襲撃にあい、拳銃で応戦してからくも逃れたものの、手を負傷している。その後薩摩藩邸にかくまわれたようだ。桂小五郎の手紙は慌ただしく京を離れたはずの123日付で、龍馬の裏書の日付は25日である。

 

多くの書物はこの桂小五郎と坂本龍馬のやりとりを薩長同盟の記述の拠り所にしているが、それに異を唱えている人もいる。つまり、この手紙はあとになってのねつ造ではないかというのである。龍馬の居場所を移動中の桂小五郎はどうやって知ったのかと。場合によっては、京で実権を握る一橋慶喜、会津藩、桑名藩のいわゆる一会桑に“決戦”も辞さないということが内容にあるので、対幕府ではないにせよ、これが漏れたらやはり大変なことになる。こんな物騒な手紙を桂小五郎は龍馬にどうやって届けたのか。逆もまたしかり。当時の技術にしては龍馬の朱が鮮やか過ぎるという指摘もある。

https://blog.goo.ne.jp/awakomatsu/e/a679143df10f24f7003603b1078d27cb

 

あれこれ書を繰ってみたものの、結局真偽は私には分からなかった。しかし、総合して考えて見れば、少なくとも何かは不自然だと思う。

 

龍馬が西郷とも親しくしており薩摩と長州の間を動いたことは確かなので、とりあえずアバウトに、薩摩と長州が「一会桑」に反発し、ともかくも幕府と距離をおく独自路線である「割拠」同士として手を組んだ、と受け止めておくのでよいだろうとは思う。西郷は参勤交代の復活を言い出した幕府を見限った様子はあるが、武力討幕に至るのはもう少し後のことである。

 

さて、龍馬は、3月には小松帯刀か西郷隆盛かの斡旋と言われている霧島での湯治に赴いている。この時に寺田屋でいち早く危機を報せてくれたお龍を同行し、日本で最初の“新婚旅行”とされている。危うく一命を落としそうになった直後であり、そんなのんびりしたものでもあるまいが、坂本龍馬という人は殺伐とした時代にあって、イメージ通りにあっけらかんとして明るい人だったようだ。

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