« 西郷隆盛 その6 天皇に関する横道にそれた論考 | トップページ | 西郷隆盛 その7 孝明天皇 »

2018年3月 5日 (月)

宇宙の話はどこにいった

江戸時代も、明治維新も、さらには西郷隆盛もよしとして、あれだけ好きだった宇宙の話はどこに行ったのか?と尋ねられそうだ。いや、尋ねられないかも知れないが、勝手に書いている。

 

実は、宇宙も変わらず強い興味の対象である。ただ、目につく一般向けの書はかなり目を通し、私にはもう書けるようなことがなくなってしまったということがある。それに、難解な数学の壁は今さらいかんともし難い。超ミクロの素粒子の話も、高次元だと言われる超マクロの宇宙も、どうも物理学者ですらイメージでとらえることができず、数式で何とか納得を得ているようなのだ。

 

そうであれば一般人にわかるはずがない。私はと言えば、「狐が種を蒔く」とか、「盗人が盗んだ反物を山分けする」とかの、遊び心満載の江戸数学ですらまともに解けない。

 

比較的最近には『時空のからくり-時間と空間はなぜ「一体不可分」なのか-』(山田克哉 講談社)を読んだ。できるだけ親しみを持ってもらいたいという著者の配慮だろうか、落語よろしく八っつあんと熊さんの時空を巡っての対話も折り込まれている。二人の対話はべらんめえ口調というだけで、テンソルがどうのこうのと随分と難しい。長屋のお二人はこんなにインテリだったのか。

 

時間と空間は不可分の関係にあり、一体として時空と呼び、質量によって曲げられる、という。山田克哉さんの本のいいところは、「なぜ質量が空間を曲げるのか」はわかっていない、という率直な語りにある。

 

質量が空間を曲げるというのはかのアインシュタインが予測したことだが、イギリスの天文物理学者のアーサー・エディントン(1882-1944)は、日食を利用し、太陽をかすめて見える星が見かけ上で本来の位置から少しずれる、つまり太陽の質量で光が曲げられる、ということを明らかにした。この観測実験もアインシュタインが示唆したものだ。アーサー・エディントンは、ブラックホールを理論的に予測したインド生まれの若き天才物理学者チャンドラセカール(1910-1995)を罵倒して潰したことでも有名になっている。エディントンとチャンドラセカールの写真はWikipediaから。

Photo_6 Photo_4

















チャンドラセカールの正しさはのちに認められ、はるか後になってノーベル賞を受け、アメリカの衛星にも名前が刻まれた。なお、光が曲がるわけではなく、光としては直進しているのだが、空間が曲がっているため、曲がりに沿って“直進”するわけだ。わかったようなわからないような話ではある。ともあれ、数式が出るわけではないので、科学史は非常に面白く読める。

 

さて、山田克哉さんはアメリカ在住の物理学者で、『原子爆弾』(講談社)という名著がある。アメリカがマンハッタン計画としていかに困難を克服してこのおぞましい兵器を作ったか、ということを解説した書である。1945年にウラン型とプルトニウム型が人体実験的に日本に投下され、広島と長崎で瞬時に何万人にも及ぶおびただしい死者を出している。そのアレルギーから、日本では核爆弾について語ることすら憚られるような風潮があるが、冷静に、事実として、この兵器製造過程について知っておく意義はある、という趣旨の書である。

 

最近では『E=mc2のからくり-エネルギーと質量はなぜ「等しい」のか-』(山田克哉 講談社)が発刊され、枕元に積んでいる。山田氏の書だけではなく、『宇宙に「終わり」はあるのか』(吉田伸夫 講談社)も昨年末に読んだ。もちろん理解はできず、頭がおかしくなりそうなスケールの話だが、なぜか楽しい。写真はハッブル宇宙望遠鏡がとらえた、はるかかなたのはるか昔の宇宙の姿の一片で、これらは全て銀河で、しかもそれぞれは想像すらできない途方もない大きさだ。

Photo_8
チリのアタカマ高地に多く設置されている壮大なアルマ望遠鏡の成果がそろそろ出てくる頃だ。平昌の冬季オリンピックでの日本人選手の活躍も嬉しい限りだったが、このアルマ望遠鏡にも日本は深く関わっている。何かわかりやすく驚くような結果が出て欲しいと、こちらも応援している。平昌も寒さと強風で大変だったようだが、日本から遠く、人里離れたところでの研究もさぞ大変だろう。頑張って新しい宇宙の姿を見せて欲しいものだ。

 

こういうのを読んでいるとボケ防止にはなるかも知れない。いや、わからないとボケを促進させてしまうか、既にボケているからわかりもしないのを読んでいるだけか、それは何とも言えない。だが、江戸時代と並行させている限りは、多分、ボケではないと自分では思っている。

« 西郷隆盛 その6 天皇に関する横道にそれた論考 | トップページ | 西郷隆盛 その7 孝明天皇 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事