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2017年6月16日 (金)

思い出のスーダン Part 2

スーダンの首都ハルツームは砂埃の街という様相だ。だが、ここはエチオピア高原から流れてくる青ナイルと、ケニアとタンザニア国境にあるビクトリア湖から流れてくる白ナイルの合流点で、ここから大きなナイル川となってエジプトの方まで途方もない距離を流れていく。日本列島の軽く倍以上の長さになるわけで、そのスケールを実感するのは難しい。

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夕暮れ前、ホテルの周辺を散策してみる。名前でしか知らなかったナイル川が眼前にあり、感慨深い。国立博物館に接した公園は緑が多く静かなところで、親子連れもいて、危険な雰囲気は微塵もない。心地よい風にあたりながら、本当にここはアフリカ、それも、欧米には悪名高きスーダンなのかと思ってしまう。

 

ホテルで見たテレビでCNNが繰り返し報道していたのが日本で起こったテロ、いわゆる地下鉄サリン事件だ。死亡者もいて何千人も負傷したらしい。遠くスーダンから母国のこんな悲惨なニュースに接するとは思いもよらなかった。これではどっちが危ない国かわからない、としみじみ感じたものだ。

 

ハルツームではイブン・シーナ病院を訪問した。出迎えてくれた細面の魅惑的なスーダン人の女医さんが、「ようこそいらっしゃいました」と流暢な日本語でにこやかに挨拶してくれたのにはびっくりした。聞けば、JICA(国際協力機構Japan International Cooperation Agency)の研修で日本に滞在していたらしい。イブン・シーナ病院もJICAの支援で建てられている。

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イブン・シーナ病院は特に泌尿器系の疾患を多く取り扱っているこじんまりとした近代的な病院なのだが、建物の外壁に回廊がある。日本ではあまり見ないが、これは、電力事情が不安定な国だとエレベーターの作動が不安定で、こういう回廊を使って患者の移動をするそうだ。

 

翌日だったか、ハルツームから400㎞離れたゲダレフというエチオピア国境に近い街に行くという。昼過ぎの出発予定が車両の手配の都合で遅れて、夕暮れになってしまった。勘弁してもらいたいと思ったが、今さら逃げ出すわけにもいかない。聞けば、4時間で着くそうだ。高速道路があるわけでもなし、いったいどうしたらそんな時間で着けるのか理解に苦しむ。出発してみると、中国が整備したという道路を猛スピードで突っ走る。確かに早いが、全く生きた心地がしなかった。ただ、途中で休憩した日本で言うドライブインから見上げた夜空には今まで見たこともないほど多くの星がきらめき、これは感動ものであった。

 

翌朝はゲダレフのUNHCR事務所を訪問。なんとここで日本人女性がスタッフとして働いているという。現地スタッフが、「彼女は難民キャンプのパトロールに出かけているので連絡を取ってみる」ということで、無線から聞こえてきたのは若い女性の声で、「せっかくいらして下さったのにお会いできずに申し訳けありません」と。我々は短期訪問だが、彼女は長く滞在するわけで、なんとも逞しい。当の彼女には後年にジュネーヴのUNHCRの本部でお会いする機会があった。国際機関には日本人女性も多いようだ。

 

そういえば、日本人医師川原尚行氏は、ロシナンテスというNPOを設立し、長くスーダンで医療を主体とした支援活動をしている。スーダンの日本大使館の医務官をしていたこともあり、スーダンとの往復回数は日本人として氏がダントツなのではないだろうか。時間のある折にホームページを参照して頂ければ幸いである。

https://www.rocinantes.org/

 

川原氏が活動をはじめたのは私のスーダン訪問よりあとのことだが、直接の知遇を得る機会があり、時にささやかな寄付もしている。それにしても、私のような軟弱な凡俗とは、その行動力、逞しさにおいて、次元が違う。

 

PKOとして自衛隊が活動したのは南スーダンの首都になっているジュバだ。当時は紛争地だったこともあって私は行く機会はなかったが、国際線のジェット機も離発着できる飛行場が整備されていると聞いた。この地には5年以上にわたってのべ3000人を超える自衛隊員が派遣されている。日本から遠く離れた地で、慣れない暑さの中、任務の困難さは半端ではなかったと思う。今年527日に無事に撤収が終了し、私も安堵する思いであった。イブン・シーナ病院がそうであるように、自衛隊が整備した道路も、長く心にとめて頂けるのではないだろうか。

 

末尾に余談を一つ。スーダンにはスーダン航空というのがあって、以前に触れたWHOのイラン人所長は、これを「インシャラー航空」と呼んでいた。インシャラーというのは「神の御心のままに」というアラビア語で、飛行機の時間がいつも遅れ、ドタキャンもあって全くあてにならないのは、誰のせいでもない、「神の御心」だそうだ。本来は敬虔な言葉のようだが、飛行機以外にもよく出てくる。最高の言い訳ではあるだろう。スーダンの人に「そんなにあてにならないのか」と尋ねると、「いや、スーダン航空は定刻だ」と言う。怪訝な顔をしていると、「よく遅れるけれども、時に早く出るから、平均したら定刻だ」と。イラン人も面白いかも知れないが、スーダン人もなかなかに面白い。

 

ゆっくりと外国旅行というのもシニアの楽しみのひとつだろうけれども、私の場合は、国内でまだ行っていない街や場所を訪れてみたいという思いを以前から抱いていた。今にしてようやく愛車での日本列島ジグザグ縦走の旅が叶いそうになった。計画通りに行けば来週に出発するので、次回からは、旅のつれづれをも写真入りで綴ってみたい。

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