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2017年4月23日 (日)

「ローマの休日」

「ローマの休日」といえば世界で最も多くの人に観られた映画の一つだろう。二十世紀を代表するかのような美女、美男、オードリー・ヘップバーン扮する王女と、グレゴリー・ペック扮する王女の特ダネ狙いの新聞記者がローマを舞台にしておりなすコメディタッチの淡いラブロマンス。これぞエンターティンメントという感がある。
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オードリー・ヘップバーンはこの映画で大女優への道を歩み、グレゴリー・ペックにはそれ以前に製作された「紳士協定」という映画通から高い評価を得た名画が残っている。

 

これだけ有名な「ローマの休日」は、おそらくは世界中で、そして日本でも、リメイクされたり、あれこれパロディのネタになったりもする。桂文珍さんは「老婆の休日」と題して、病院に集うヒマな老婆のやりとりを落語として面白おかしく演じている。武田鉄八さんが坂本龍馬に扮して、ローマのトレビの泉の前で「今日はおやすみなんです!」としたコマーシャルも面白かった。一瞬、「ん?」とさせて、このヘップバーンスタイルの上戸彩さんが「リョーマの休日!?」とオチをつける。

 

著作権の問題がなくなったのか、「ローマの休日」のシナリオとDVDがセットになった冊子が880円と安かったので購入した。映画で英会話を勉強しようというのが趣旨のようだが、今さらうまくなりそうにもないのでそちらはあきらめて、スクリーンと英語・日本語訳を対比させながらセリフの妙味を読み物として楽しもうと思っている。

 

同じく世界的に評価の高いハンフリー・ボガードとイングリッド・バーグマンの映画「カサブランカ」(1942年製作のアメリカ映画)はセリフをほとんど暗記するぐらい読み込んだ。英語はさっぱり上達しなかったものの、そうしてみると、この映画には色々な隠し味があることを知った。

 

ボガード扮するリックの酒場で、リックに思いを寄せる女性が「昨夜はどこにいらしたの?」と尋ね、「そんな昔のことなんか覚えちゃいない」(That’s so long ago, I don’t remember)とそっけなく答えるリック。さらに、「今夜会える?」に対して、「そんな先のことなんか考えたこともない」(I never make plans such far ahead)という有名なセリフがある。

 

この言葉は、リックと恋人だったイルザ(イングリッド・バーグマン)のやりとり、「(ドイツ軍がパリに侵攻した日のことは)僕は全て覚えている、ドイツの軍人は灰色で、君は青い服だった」(I remember every detail. The Germans wore gray, you wore blue)と対をなしている。そして、二人でマルセイユに行って結婚しようと言った時のイルザのセリフが、「That’s too far ahead to plan」である。待ち合わせの駅に現れなかったイルザにリックは深く傷つく。

 

「カサブランカ」のシンボル的なセリフ「君の瞳に乾杯!」(Here’s looking at you, kid)は二人が恋人同士だった時にリックが口にしていた言葉だが、思いがけないイルザとの再会にも固く心を閉ざすリックからは決して出てこない。

 

最後の最後、夫が亡くなったと当時思い込んでいたという事情をのみこみ、「(夫である彼と一緒に行かなければ)君はきっと後悔する」、「今日ではないかも知れない、明日でもないかも知れない、でも、すぐに、そして生涯にわたって」(Maybe not today, maybe not tomorrow, but soon, and for the rest of your life)、続けて「この狂った世の中ではちっぽけな三人のことなんか取るに足らないことだというぐらいこんな俺にも分かる、いつか君にも分かるだろう」と言ったまさにその時に、「Here’s looking at you, kid」と出てくる。アメリカ人にはこの一連のセリフがジーンとくるらしい。

 

もちろんこんなことは私の英語力では映画からは全く分からない。30年以上も前のこと、ニューヨークで手に入れたカサブランカのシナリオ本を読みこんで初めて知ったことだ。評価が高いからこそだろう、『君の瞳に乾杯』と題された日本語での対訳の書もDVD付きの冊子も出ている。

 

「ローマの休日」の対訳本は以前から持ってはいたが、改めて見て、何か発見があるかも知れない。江戸時代から量子力学、はたまた映画と、なけなしの頭の中は何とも忙しく、本業を忘れてしまいそうだが、それもまたシニアの特権かも知れない。

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