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2016年11月 8日 (火)

GW150914

GW150914」は、わかる人にはすぐわかるが、わからない人はいくら考えてもわからないので、タイトルにこういう言葉を使うのは快感だ。思わせぶり、恰好つけ、気取りか、いずれにしてもその程度のこと。

 

いかにも難しそうだか、この言葉自体は実に単純。Gは重力のGravitationalで、Wは波のWave15というのは2015年に発見されたということを示し、0914はそれが914日だったということを表している。アメリカのLIGOという研究施設で2015914日に初めて確認された重力波のことだ。

物理学者というのはしかめっ面をして常人にはとうてい理解できないやたら難しいことばかりやっている印象を誰しもが持つが、プロジェクト名や施設の名前は語呂あわせとしか思えないような茶目っ気を感じさせるものが多い。人物も、ローレンス・クラウスさんはチャラ男風だし、KEKの多田将さんもしかり。案外に面白い人達だ。誰でもが知っている、世界の物理学を一変させたかのアインシュタインからしてこれだから、推して知るべしかも知れない。
Photo
命名は単純でも、その内容は全くもって難解だ。というか、サッパリわからない。ブラックホール同士が合体した際に発生した時空のさざ波である重力波が10億年以上の旅をして地球に届いたのをつかまえたという。下記がその証拠。もともとアインシュタインがその方程式から予測し、間接的な証拠はあったらしいが、変化があまりにも軽微なため直接的につかまえることができたのは今回が初めてで、物理学史上に名を刻む偉大な業績だという。

Ligo

http://www.ligo.org/science/Publication-GW150914/science-summary-japanese.pdf

我々は物を落とせば下に落ちるというのはわかりきったこととして深く考えることはない。が、重力というのは難しい。リンゴが木から落ちるのを見て、ニュートンが地球と月が引力で引き合っているのではないかと着想し、質量を持った物同士は引き合うという万有引力の法則を打ち出したというのは有名な話だ。その法則は近似としては今も正しい。そのニュートンも、はるかに離れた物同士がなぜ引き合うのかについては考察が及ばなかった。それに解を与えたのがアインシュタインで、下記の方程式がそれである。
Juryoku302
http://image.search.yahoo.co.jp/search?rkf=2&ei=UTF-8&p=%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%96%B9%E7%A8%8B%E5%BC%8F#mode%3Ddetail%26index%3D3%26st%3D0

 

なんだ、意外に簡単な式だ、と思いそうになるが、記号をまとめて美しくしているだけのことで、これがとんでもなく難解。仮定のおきかたで解がいくつも出てくるらしいし、テンソル微分だの何だのが必要で、一般人はサジを投げた方がいい。要は、質量があればその周囲の時空が曲がるということを示しているようだ。モノが坂を落ちるように、その曲がりが力を及ぼすと。ならリンゴが落ちるのは時空が曲がっているからか、ということになるが、それもまた常人にはわからない。

 

ブラックホールもまたアインシュタイン方程式の産物で、そこでは巨大な質量が無限小の点に収束し、物理学が破たんしているという。こういう点は規定のしようがないので、とりあえず、ここを超えたらもう二度と脱出できないブラックホールですよ、という事象の地平面というのが想定されている。方程式からこれを考え出したのがアインシュタインと同じドイツ系ユダヤ人のカール・シュヴァルツシルトで、第一次世界大戦に従軍した時の傷病で早逝している。では星がどういうふうになったらブラックホールになるのかというのを考察して導いたのがインド人のチャンドラセカールである。その時は不遇であったが、後年にノーベル賞を授与され、今もX線衛星にその名が刻まれている。

 

ブラックホールは難解な代物だ。そこでは物理学が破たんしているというのだから、どんなに優秀な物理学者でも理解できていないということだ。記事を読んでいると、ブラックホールは物質ではないという人もいるし、物体と表現しているものもある。そのあまりにも強い重力で“光さえ抜け出せない”とよく言われているが、光には質量がないのに、どうして重力が関係あるのか、という単純な疑問が生じてしまう。私もこれには随分悩まされた。とりあえず、時間と空間という概念そのものが存在しないか、空間が極端に曲がっているため直進するはずの光が身動きとれなくなる、と暫定的に受け止めておくようにしている。動かない光というか光子は決して認識できない。だから真っ暗だ。ところが、これにもホーキング輻射という素粒子のトンネル効果が現れて出てくるものもあるというからこれまたわけがわからない。ブラックホールの周囲もはなはだややこしい。

 

わからないことをいくら考えても無駄なので、重力波の観察がどうしてそんなに重要なことなのか、ということに触れておきたい。これは比較的簡単で、今までは、主として、電波やX線、可視光や紫外線などの光の仲間で宇宙を観察していくほかなかったのが、それとは全く別な手段、重力の変化を波でとらえてそこから宇宙で起こった現象を観測していく道筋ができたということである。日本にはKAGRAが稼働途中にあり世界が期待を寄せている。光や重力波以外にも、宇宙観測の手段の一つとして日本のお家芸であるニュートリノもある。多様な手段によってそれぞれの弱点を補いあい、格段に多くの宇宙の情報が得られることが期待されるようになったのである。

 

宇宙はとにかく難しい話ばかりだ。重力もまだまだ一筋縄ではいかないらしい。研究者は、宇宙のことが好きではあっても、研究は苦しいと思う。一般人も、理解しようと努力する人は苦しいだろう。でも、私のように、そんなことはサジを投げて、単なる好奇心で“お気楽”に見ている分には、宇宙というのは無茶苦茶楽しい。ちょくちょく書いていきたいと思う。

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