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2016年8月24日 (水)

病院の新築

誰が考えても分かることだと思うが、特に急性期の病院の新築には巨額を要する。だからまずは建て替えをせずに改修で何とかならないかと考えるわけだが、以前にも書いたように、多くの場合、それは難しい。

 

新病院建設にあたっては、具備すべき機能を得ながら、関係者は身を削るような思いをして、あの手この手のコストダウンを図る。新大原綜合病院もそうだ。今はかなり形が見えてきたところで、竣工まであと1年とちょっと。よくここまできたと、関係者はさぞ感慨深いものがあるだろう。私も設計に関わった一人として、案内を得て、吹き曝しの鉄骨の中を、ここはあれ、そこはこれ、と確認しながら大汗をかいて屋上まで上がってみた。やはり嬉しい。

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それで、つい最近、思わず目を疑うような記事を目にした。それは高松市民病院のことだ。記事に下記のような記載がある。

 

高松市民病院(同市宮脇町2)が経営不振に陥っている。2015年度の経常損益は6億800万円の赤字で、過去10年間で最悪となった。

 

http://mainichi.jp/articles/20160821/k00/00m/040/021000c

 

世間には知られていないが、公立病院には、赤字補てんとは別に、「一般会計繰入れ」という表には出ない税金から巨額支援というウルトラCがある。公立病院はその数億円を手にした上で、赤字とか黒字とかと言っているわけだ。ウルトラCのない民間病院は最初から公立病院とはハンディキャップ競争を強いられている。その公立病院がこの巨額赤字だ。民間病院ならこういう経営は絶対に成り立たない。よく民間とか公立とか言うが、実のところ一般病院の収入源は、公的な医療保険、労災、交通事故などの保険からが99%以上を占めており、拠って立つ点という意味では公も私もなく全く同じである。色々な規制とルールでがんじがらめに縛られているという点も同じだ。

 

高松市民病院の赤字の原因は“医師不足”だそうだ。世間はそれで納得するかも知れないが、それは全くの言い訳に過ぎない。医師を多く擁すれば経営が成り立つというのは、競合病院がなく、それなりのマーケットがあってこその話だ。四国には各県に医学部がある。高松という大きな都市にあって医師が集まらないのは、病院に魅力がないということにほかならない。必要とされる病院でなければ赴任意欲もわきはしない。

 

その一方、

 

市は18年9月、総事業費204億5000万円を投じ、高松市仏生山町に新病棟を開院させる。

 

とある。

 

HPで見る限りでは病床数360床程度とのことだ。医師数も42人。どうしてこんなに費用がかかるのか。病院建設にも相場というものがある。計算は色々あるが、一番単純なのは1㎡あたりの建設費用だ。急性期病院の場合、安い時で25万円、今は建設費高騰で35万円以上になっている。360床であれば建設延べ面積はおよそ3万㎡ぐらいなので、単純に計算して105億円。土地代を7億円、設備費や医療機器を仮に30億円見込んだとしても、総額150億円以下が相場だ。204億円とはあまりにもかい離が大きいので、記事が不正確なのではないかとも思う。

 

赤十字病院と県立病院という大きな病院が近くにあるということは記事も指摘している。税金でこんな巨額を費やすに値する公立病院がそもそも必要なのだろうか。少なくとも、どうしても地域に足りない場合に、という公立病院の趣旨には反している。

 

あくまで一般論だが、それでもやるという理由はある。それは、通院患者は秩序が変わることを好まず、病院は政治家にとって票になり、役人もあえて泥をかぶって廃院や縮小に動くことはしないということ、職員も公務員で、技術職は今さら一般職にはなれず、場を失いたくないからだ。それに、結果が悪くても誰も責任をとらない。個々の立場はわからぬでもないが、時代の変化や需給を軽視してのこういう社会構造は不健全だ。

 

経営を移管した公立病院も多くあり、夕張や銚子など、どうにもこうにもならなくなって病院としては突然死のようになったところもある。PFIという民間からの出資で建設費用を賄った公立病院もある。自由度を高くするとして独立行政法人化と言いながら、一般会計繰入れは旧来と同じ、といういささかインチキ臭いやりかたで存続を図る公立病院もある。ハンディキャップレースであっても、一般の県立病院や市立病院などの公立病院は、少なくとも大きな民間病院のある都市部においては、民間に淘汰されつつあるのである。

 

私は高松とは縁がなく病院のことも詳細は知らない。しかし、記事で見る限り、この市民病院に役人による医療行政の相変わらずの無駄遣いの縮図を見るような気がしてならない。

 

福島市には“幸い”にして税金を多く投入しなければならない市立病院はない。その分、大原綜合病院は市民病院としての役割を担う気概で邁進している。コスト削減では随分苦しんだが、こと機能においては、現病院より格段の進化を遂げるはずだ。市民の皆様の応援で、職員が準備にも心血を注いでいる新病院を大切に育てて欲しいと心から願っている。

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