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2016年2月22日 (月)

はかない現実的な夢

福島駅東口に古関裕而氏のモニュメントがある。オルガンを奏でるにこやかな温顔が印象的だ。「栄冠は君に輝く」「長崎の鐘」など、多くの名曲を生んだ福島出身の音楽家である。

 

県全体では大震災、原発事故前と比して人口の減少があると聞くが、福島市内は震災前と後では全く変わらない。賑やかさが増したということもないし、寂れたという感もない。随所におかれた放射線量のモニタリングポストが傍目には大きな変化かも知れない。私が見る限りでは全く安全範囲だ。大津波や原発の被災地は帰還が思うように進まないところもあるだろうし、まだまだ復興には遠いが、そこを郷里とするかたがたが一日も早く安心して住めるようになることを祈りたい。

 

「災い転じて福となす」という言葉がある。被災者でない者が口に出すべき言葉ではないかも知れないが、そうなって欲しいと思う。医療面においては、現在、福島県立医科大学において、「ふくしま国際医療科学センター」の建築工事が進められている。「福島の復興を健康面から支える」とのスローガンが掲げられており、放射線被ばく研究、あるいは逆に、放射線機器を用いた治療など、国際レベルの先進的な施設になることが期待されている。この科学センターも関わって、起こってしまった原発事故の後始末のノウハウも世界に発すべく福島に蓄積されるはずだ。

 

ところで、宇宙に関する本を見ていて、既に新聞などでも報道されているILCという言葉をよく目にする。これは、International Linear Colliderの略で、巨大な直線型の加速器だ。これによって電子を加速して陽電子に衝突させ、その生成物を分析することで素粒子の世界をのぞき見る。素粒子に質量を与えるヒッグス粒子の存在を証明したのがスイスのジュネーブにあるCERN(欧州合同原子核研究機構)のLHC(大型ハドロン衝突型加速器)という陽子と陽子を衝突させる円形加速器だ。電子を衝突させる場合は円形の加速器ではロスが大きくなるため、どうしても直線型にする必要があるらしい。量子物理学者、天文物理学者など、ともかく宇宙や量子論に関わっている学者にとってこれはどうしても欲しいようだ。『宇宙を創る実験』(村山斉編著 集英社新書)と題されたILCの必要性を訴えることに特化したような書もある。国際協力による研究で、予算さえつけば建設を始めることができる段階にきているという。

 

このILCの候補地が岩手県の北上山脈と佐賀県の脊振山である。それならいっそ、と思う。北上山脈に作って福島から岩手を世界の量子物理研究のメッカにしてしまえと。全長30km以上のトンネルを掘り巨大な機器を入れ込むという大事業のため日本単独ではできず、世界各国と共同して行う必要がある。“爆買い”の経済効果どころではないだろう。数千人の研究者を擁するスイスのCERNも実のところ日本も協力しており、相当数の日本人研究者がお世話になっているのである。それに、この領域では日本はノーベル賞受賞者を多く出すなど、既に世界に冠たる研究実績も研究施設もあり、背景も十分満たしている。

 

学者のために巨額を費やしてどうするのか、という意見もあるかも知れないが、それは違う。確かに、明日役に立つ、というものではない。しかし、この研究は、量子論や宇宙のことばかりではなく、超伝導、医療、量子コンピューターなどの先進技術の発展に間違いなく寄与する。基礎科学研究の発達なくして応用技術の進展はあり得ない。そもそも我々の体自体も大きくは分子、さらに元素、こまかくは陽子と中性子、電子、あるいは12種類の素粒子とそれらがくっつく力から成り立っているわけで、素粒子研究は物質や生物の根源に迫ることでもある。ヒッグス粒子がなければ我々の体は一瞬にしてバラバラになってしまうそうだ。

 

こういうプロジェクトに私が関われることは何もない。しかし、研究者の移動の便宜を図る知恵はある。それは、成田空港から福島空港、仙台空港、花巻空港に小型機のシャトルを飛ばすということだ。機種はピラタスPC-12が最適だと思う(下記写真)。キングエアー250ならなおいい。空港から現地への送迎はヘリコプターを使えばいい。EC-135かアグスタか、はたまたベル429か。あまり大きな機体でなくていい。海上を飛ばなくてもいいので、AS-350とかEC-130でもいいだろう。こうすれば東北地方と世界との距離はぐんと縮まる。アインシュタインやハイゼンベルグの理論は理解していても、こういう知識は彼らにはあるまい。
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「とんでもないこと言う奴だ」と笑われるだろうが、私自身はとんでもないことだとは全く思っていない。むしろ、なぜやらないのか、と思っているぐらいだ。とはいえ、政府や地方行政が本気で取り組んでくれるかどうか、それは容易なことではなかろう。だから本稿を「はかない現実的な夢」と題した。

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