« 年末年始雑感 | トップページ | ぶつからない車 »

2016年1月13日 (水)

飛行機の半ドア

韓国LCCのジンエアー機が半ドアで飛行していたことが報道されていた。自動車ですら半ドアだと警告ランプが点る。ちょっと考えられないようなことだが、外科手術でも、患者を間違えた、左右を誤って健側の手術をしてしまったという、とんでもないことが起こっているし、半ドアで飛行ということも起こり得るのだろう。もちろん、本来あってはならないことだ。高度3000mまであがっていたということなので本当に危ないところだった。

 

ジェット機(ターボファン機)は、気圧が低く抵抗が少ない高度を飛ぶ方が飛行効率がいいので、巡航高度として1万メートル前後を飛ぶ。この高度の環境では人間は生きられない。したがって、客室キャビンは濃縮した酸素を足して0.84気圧ぐらいに与圧されている。加温もされていて、外気がたとえマイナス50℃であっても、機内は20℃前後に保たれる。高高度を飛ぶ飛行機の気密性は死命線である。万一に装置の異常や何らかの機体の損傷が起これば急減圧をきたすので、客席に酸素マスクを降ろし人間が生存できる高度まで急降下せねばならない。1988年に起こった、高度上空で機体の天井の一部が突然吹き飛んだアロハ航空の事故は何とも衝撃的であった。こんなんでよく着陸できたものだ。乗務員一人が犠牲となったが乗客の命は助かった。
Aloha_airlines_flight_243_fuselage

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AD%E3%83%8F%E8%88%AA%E7%A9%BA243%E4%BE%BF%E4%BA%8B%E6%95%85#/media/File:Aloha_Airlines_Flight_243_fuselage.png

 

与圧装置の異常による航空機事故は実際に起こっている。有名なのは2005年のギリシャのヘリオス航空の事故で、与圧装置が本来そうなっているべき自動モードになっていないのをパイロットが気づかないまま上昇を続け、そのまま失神してしまったのが墜落の原因と言われている。ニッカポッカにハンチング帽という古典的ファッションをトレードマークにして、世界的に人気も実力もあったペイン・スチュアートというアメリカ人プロゴルファーは1999年に航空機事故で亡くなっている。これは、彼が乗っていたビジネス機が何らかの理由で急減圧をきたし、操作のいとまもなくパイロットが失神してしまったのが原因と推測されている。異常飛行をしている飛行機は戦闘機がスクランブルで追いかけるので、それでコックピットの異常事態が観察されている。しかし、時速数百キロで自動操縦で飛行している機体に対してなすすべはなく、市街地への墜落が危惧されるような場合はその機体を破壊することも想定されていた。どちらの事故もその必要はなかったが、全員が死亡ということに変わりはない。

 

それで、さらにまた同じジンエアーで「飛行中に火災」という見だしがネットにあった。これはとんでもない航空会社かと思ったら、こちらは、エンジンに鳥が吸いこまれて発火したらしい。バードストライクと呼ばれる、鳥との衝突は世界中の航空会社が悩まされていることで、半ドアでの飛行とはわけが違う。同じに論じるのはフェアではない。2009年の、死亡者がゼロで奇跡と称されたUSエアウェイズのハドソン川への不時着もそもそも両エンジンへのバードストライクが原因である。

 

バードストライクがいかに怖いかというのは、下のヘリコプターの写真を見れば一目瞭然だ。飛行機と比べれば3分の14分の1の速度のヘリコプターですら鳥を避けることができずこうなってしまう。ヘリコプターの機長席は飛行機とは反対で、正面から向かって左側なので、この事例はまだ幸いであった。吸気口に入るとそのエンジンはアウトだ。ジェットエンジンは多くのファンブレードで構成されているので、火山灰や鳥などの異物には脆弱である。バードストライクの写真は西川渉氏の『航空の現代』http://book.geocities.jp/bnwby020/の以前の記事から引用した。
Tori02
かなり以前の個人的な体験だが、与圧装置のない、高いところは飛べない小型のプロペラ機で半ドアを体験したことがある。アフリカに行った時のことだ。タンザニアからルワンダ国境までの移動の際、副操縦士席に座ったのはいいものの、横が半ドアのままであった。風がスースーするというので気づき、パイロットの指示により上空で閉めなおそうとしたところ、閉めるどころではなく、開けた途端に風がドーンと吹き込みドアが大きく開いて飛行機が傾き、あわやビクトリア湖のもくずとなるところであった。結局、シートベルトに支えられ必死にドアを引っ張りながら離陸した空港に引き返すはめになったが、あの時の恐怖は忘れられない。パイロットも確認を怠り、私も不注意であった。たかだか時速300㎞程度の飛行機でも凄い風圧だということを実感した。フィリピンから帰国する際、ドアの異常でマニラに引き返す、ということもあった。

 

半ドアのジンエアーの737が無事で済んだのは本当によかったと思う。が、こんなことは二度と起こらないようにしてもらいたいものだ。乗客は生きた心地がしなかったであろう。なぜかそれはよくわかる。

« 年末年始雑感 | トップページ | ぶつからない車 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事