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2015年7月29日 (水)

エスカレーターでの事故

先般、ネットで「中国湖北省のショッピングセンターでエスカレーターの床が抜け落ち、子どもを連れた女性が犠牲になるという事故があった」と、防犯カメラの映像だろうか、事故の時の動画も一緒に報道されていた。異常の時に咄嗟に子供を押し出すように前にいた人に預け、母親はそのままピットというか機械室に落ち込んでしまい、結局亡くなったという。何とも痛ましいことだ。

 

エスカレーターは見た目にはすっきりしていても、機械室があり結構複雑な構造になっている。上にも下にも一定の凹みが必要で、当然ながら、床を兼ねてその蓋が必要となる。保守点検はその蓋をはずして行う。
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http://image.search.yahoo.co.jp/search?rkf=2&ei=UTF-8&p=%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC#mode%3Ddetail%26index%3D53%26st%3D1946

 

もう20年以上も前のこと、日本で負傷した中国人患者をエスコートして大連の病院に搬送した際、まだ建設途上でドアが設置されていないエレベーターに乗って患者が入院する病室に行くはめになった。高層階に行くドアのないエレベーターに、「これは悪い冗談か」と、恐怖に震えながら壁に張り付いて手すりを必死につかんでいた記憶がある。完成を待たずして使えるところから使い始めるというのは安全管理以前の問題だとあきれ返った。今はもうそんなことはないだろうが、先のような事故を見ればその時の恐怖体験が蘇える。

 

エレベーターでも事故は起こっているが、実のところ、エスカレーターでの事故というのは思う以上に多い。さすがに先の事例は普通ではちょっと考えられないような事故だが、正常に動いている状況で、転んで大腿骨頸部骨折をした、手をついた際に腕の骨を折った、というのは決して珍しくはない。高齢者や身体が不自由な人は乗る時あるいは終点での一歩がうまく踏み出せないことがある。だから転倒してしまう。階段を歩いてもあがれるぐらいに元気な人は便利に使えて、上階に行くためにそのような移動手段を必要とする人ほど使えないというパラドックスがエスカレーターにはある。踏み出しが容易になるように平らなところを少し長くしたり、動きを遅くしたりという工夫がなされてはいるものの、どのようにしても、動いているものに乗る、降りる、という動作が必要だという宿命は免れ得ない。

 

病院の新築にあたって、エスカレーターを設置するかどうか、というのはよく問題になる。設計会社に尋ねたところ、昨今の情勢としては、設置する病院、あえて設置しない病院は、半々ぐらいだという。私がよく知っている病院は古い建物の時から運行を停止し、新病院には一切設置しないという方針をとっていた。企画設計などで私が関わっている範囲においては、病院においてエスカレーターはあまり好ましくないと意見することにしている。新築の大原綜合病院は、色々な議論を経た上で、最終的にエスカレーターは設置しないこととなった。この点、「どうして設置していないのか」と、不便をおかけする面もあるかも知れないが、御理解頂ければと願っている。エスカレーターに限らないが、病院の医療安全管理室に報告される最も多い患者さんのインシデントは「転倒」である。

 

それでもなぜエスカレーターが多く用いられるかというと、普通はさほど問題なく便利に使え、エレベーターと比べて、連続的に動くので到着を待つ必要がなく搬送能力が圧倒的に高いからだ。だから、駅やショッピングモールなどではエレベーターを併設しつつエスカレーターが多用されている。

 

リスクがあるからダメだ、ということになると今の社会は成り立たない。その最たるものは自動車であろう。交通事故のリスクは誰でもが知っているが、それでもなお、便利さにはかえられない。そのリスクをどう軽減するかというのがつきつけられた課題で、最近の車にはレーダーやカメラによる自動ブレーキなど、衝突軽減装置が組み込まれているものが多い。エレベーターは、何かの異常時には直近の階で停止する仕組みになっている。「また点検か」と三角の標示と囲いにウンザリしてしまうこともあるが、定期点検が厳しく義務づけられているのも安全性をより高めるためなので仕方がない。

 

先のエスカレーターの事故の正確な原因についてはまだわからないが、どうも床の固定がきちんとなされていなかったらしい。人間はミスを犯すものだという前提で、マニュアルを整備し、必ず複数で確認するとか、色々な方策は取られているにせよ、残念ながら不幸な事故はあとを絶たない。日本でもつい先日に離陸直後の小型飛行機が人家に墜落して居住者が亡くなるということがあった。

 

火山噴火などの自然災害は自然との闘いで、これは勝ち目がないので、せめて減災で考えていくほかない。人為災害は自ら作り出すだけに何とかなりそうな気もする。しかし、人間は宿命的に不完全性があり、これも克服は容易ではないとしみじみ感じる。

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