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2015年6月21日 (日)

『家族という病』

NHKでの現役時代を知っているのは私の世代がギリギリで、若い人は全く知らないかも知れない。下重暁子さんというと、上品で知性あふれ、清楚な美人のアナウンサー、というイメージであった。

 

その下重暁子さんが著した『家族という病』(幻冬舎新書)を読んでみた。2015315日が初版で、私が買ったのは2015422日の第六刷となっている。大体が本というのはそんなに売れるものではなく、初版は3000部ぐらいで、増刷して1万部売れたら御の字である。30万部売れたということなのでベストセラーと言っていいだろう。私に関して読む読まないは、売れ筋かどうかというのはあまりというか、全く関係ないのだが、確かにきれいごとだけでは語れない面もあるので、あの下重さんが家族についてどんなことを書いているのかと興味を持った次第。売れているということはそれだけ関心がある人が多いということだろう。

 

読んでみてびっくり。およそらしからぬ、端的に言えば悪態のつき放題。そう言って悪ければ、誰はばかることなく言いたい放題だ。決してそれほど特異だとは思えないのだけれど、自らの生い立ちのこともあってか、世間の言う家族愛だの兄弟愛だの、下重さんにとってそんなものは虚構に近いらしい。
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http://image.search.yahoo.co.jp/search?rkf=2&ei=UTF-8&p=%E4%B8%8B%E9%87%8D%E6%9A%81%E5%AD%90#mode%3Ddetail%26index%3D25%26st%3D973

 

本書の小見出しだけでも、何とも刺激的ではある。書いている内容にも負けないものがある。けれども、読後感として何か不思議な清々しさを覚えた。タテマエではなかなか言えないけど、そういう面も確かにあるなぁ、という指摘も多い。下重さんに一貫しているのは、家族、肉親といえども、それぞれが個性を持つ個々人で、お互いをよく理解しているかというと、決してそうではないわけで、それを強引に“そうでなければならない家族愛”で包括しているところにしばしば無理を生じる、ということだと私は読んだ。

 

下重さんが冷たいかというと、それはそうではなく、叔母さんの死にあたっては、「叔母だってもっと見舞いに行きたかった。無理を言って欲しかった。私が頼りにならなかったのかとの自責の念もある。家族という役が私にはつとまらないのだろうか」と書いている。これも本音ではあるだろう。夫、彼女の表現するところの“つれあい”に対する愛情は端々に感じる。決して家族というものを否定しているわけではない。周囲も、御本人も、多分に「個」というものが優位にあったのだろう。それと、見知らぬ人から受けた多大な親切にうたれ、「何か事があったら相手を思いやり、助けることができるのが家族。ほんとうの家族とは、血のつながった家族を超えたところに存在する」という考えにいたったのかも知れない。

 

彼女なりの結論は、末尾にある「私への手紙 ― 最後は一人」の中にある。それは、「なぜ私は、家族を自分から拒絶しようとしたのか。家族というよけては通れぬものの中にある哀しみに気付いてしまったからに違いありません。身を寄せ合ってお互いを保護し、甘やかな感情に浸ることでなぐさめを見出すことのごまかしを、見て見ぬふりが出来なかったからです」ということだ。

 

下重さんはあえて子供をもたなかった。その点では体験が欠如している。家族関係をwetdryなタイプに大別してみれば、彼女はdryで、私自身もそれに近い。けれども、そんな私でも、孫娘との写真では、自分では全く意識していないのに、見て気恥ずかしくなるぐらいに、いわゆる“相好を崩して”いる。小1時間も相手をしていれば多分面倒になってくるのではあろうけど。この一文を綴っているまさにその時に一つの小包が届いた。何かと開けて見れば、長男夫婦が621日の「父の日」に送ってくれたゴルフボール。大切にと思いつつ池に落としてしまうというのは何やら家族関係に似てなくもない。

 

本書を読んでいる時にふと、リリー・フランキーさんの『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』の一節を思い起こした。あれだけ愛され愛してやまなかった母親の死に対して、悲しみ、寂寥感だけでなく、一種の束縛から放たれた安堵感をも覚えたことを作者は率直に吐露していた。

 

家族が「病」にならないためのキーワードは「自立」と「個」だろうけれども、家族にはそれだけでないものがあることは確かだ。おそらくは永遠に結論の出ないテーマだし、活字から自らの生き様を探ることはできないが、これを機に、もう少し意識して書や映画など見てみたい。

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