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2015年2月14日 (土)

色々な職業

作家の曽野綾子さんが、「もし生活できなくなったら自分にできる仕事が何かあるかと、新聞の求人欄をよく見る」と何かに書いておられたことがある。幼少時の辛い体験のこともあったのかも知れないが、まさかこれほどの人がそんな必要などあるわけがない、と思ったものだ。しかし、社会的地位や収入の多寡に関わらず、人間誰しもそんな気持ちを持つことがあるのだろう。安定に不安を覚えるからこそ懸命さも出るわけで、それはむしろ健全かも知れない。

 

それにしても、色々な仕事があるものだ。『職業外伝』(秋山真志 ポプラ文書)は、今はもう廃れたか廃れつつあるレトロな芸能的職人の世界を描いていて、映画看板絵師、チンドン屋、流し、飴細工師とかを紹介している。イタコの話もある。紙芝居は楽しみにしていたかすかな記憶があり、なんだか懐かしい。これらの仕事をするにはやはり職人的才覚が必要だろう。へび屋というのもあって、そりゃなんだ、と思ってしまうが、言ってみればヘビを主な原料とした漢方薬局で、少なくなったとはいえ、今もある。乾燥したコブラを粉にしたコブラパウダーは人気があるようだ。ヘビは省エネ動物なので決して体のスタミナはないと思う。しかし、瞬発力は抜群で、非常に強力な消化酵素があり、猛烈な毒など、タンパク質を多彩に合成する能力は極めて高い。したがってその源となるアミノ酸も豊富に有しているだろう。効果のほどは知らないが、滋養源として重宝されるのはゆえなきことではない。ただし、この仕事は私の度胸ではできそうにない。

Hebiys


http://www.hebiya.com/









ライターの記述ではなく、さまざまな理由から、求人によってその職業を体験した者自らが書いた物はやはり真に迫る。『原発放浪記』(川上武志 宝島社)はいわば原発事業の底辺で働く労働者の体験が語られた貴重な作品だ。『ソープランドでボーイをしていました』(玉井次郎 彩図社)は東日本大震災で失職し投機でも失敗をした筆者がやむにやまれず飛び込んだ世界のことを生々しく描いている。客の楽しみとは裏腹に相当に厳しい世界ではある。著者は歌が相当にうまいようだが、文才もあるのではないか。人生の辛酸をなめているはずの心優しき泡姫の描写にもホロリとさせられる。この稼業そのものが裏と言えば裏だが、そのさらに裏面を教えてくれる本だ。ソープランドが法律的には風呂屋さんと同じ扱いというのは知らなかった。

 

色々みても、とりあえずはおかれた場所で咲く、というか生きていくしかないとつくづく思う。それでも想定外が多く起こるし、失業の憂き目にあうことだってあるだろう。人間というのは社会的存在であるだけにややこしく複雑だ。変わった仕事というわけではなく、ごく普通にあるお堅い仕事の代名詞のような銀行員ですら、その内実を誇張して描けば、人気ドラマになってしまうような面白さもある。人間社会そのものがドラマ以上にドラマなのだろう。曽野綾子さんも、案外、求人欄に作家としての想像をかきたてられながら見ているのではないだろうか。

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